貴社のブランドを守るために!中国商標を登録してトラブル回避

貴社のブランドを守るために!中国商標を登録してトラブル回避

ブランド戦略としての商標登録の重要性

ブランドとは、個々の商品やサービスに用いられる技術(発明や営業秘密)やデザイン(意匠)、コンテンツ(著作物)に対して指示を出し、それらの総体として作り出される、事業活動において中核を占める知的財産の一つだと、特許庁は指摘しています。

作り上げたブランド・イメージを事業者から消費者に伝える、または事業者内部で、担当者間で情報交換するためには便利な道具が必要です。例えば、消費者に対し店頭でブランド・イメージを伝えるために機能の特徴や企業の優位性を説明しても、イメージはなかなか伝えることができません。企業内で目指す方向について情報を共有することは可能ですが、そのシンボルとなるものが求められる。そのような場面において、ブランド・イメージをより効果的に伝達するのが“マーク”です。

ブランド戦略は、“マーク”を媒介として、その過程における情報交換を効果的に行います。皆さんもご承知のように “ANA”や“ナイキ”のマークをみれば、単純明快にイメージが伝わってきますよね。例えば、ANAのマーク(ロゴ)を見ると、日本の航空会社とすぐに認識できます、また、優れたサービスを提供する会社だというイメージが湧いてきます。そして、このマークを拡散するだけで、ブランド力を発信して、大きな宣伝となり広告となるわけです。

また、ナイキのマークは、自社の商品やサービスを競合他社から識別させ、差別化させる強力なブランド・イメージを持っています。

このように、ブランド・イメージを構築して、そのイメージを速やかに消費者等に伝達させるには、そのイメージがわかりやすく、かつ強烈に認知されるような商標が必要となってきます。しかし商標としての法的権利を主張できなければ、誰でも勝手に使用できてしまいます。すなわち、ブランド戦略とは、ブランドとなる“商標”の権利を速やかに取得(登録)して初めて、事業戦略として機能するということです。 したがって、“商標”は事業戦略や経営戦略上、きわめて重要な知的財産であることを認識する必要がありますが、なぜか日本企業は“商標”に対して防備が甘いという印象があります。

ここまでやる!? 中国商標のトラブル事例

中国企業等が日本で周知されている商標を、先回りして中国で出願して登録する行為は冒認(ぼうにん)出願(抜け駆け出願)といわれています。この“冒認出願“とは、特許・意匠・商標・実用新案において、第三者が他人の発明等を盗み、その発明等で出願を行うことです。そして、あろうことか、冒認出願した企業が、中国において日本の商標所有者に対して訴える(権利行使する)という事例が数多く発生しています。

とくに日本と米国のブランドは中国では人気があり、日本ブランドは訪日中国人観光客の爆買いで知られているように、「安心、安全、高品質、クリーン」といったイメージがあります。最近は日本ブランドというだけで売れる時代ではないと言われていますが、それでも根強い人気があることは間違いありません。だからこそ、日本ブランドが狙われるわけです。

比較的最近のニュースでは、2019年12月、「無印良品」をめぐる商標侵害の訴訟で、日本の良品計画は北京の中国企業に敗訴したことが伝えられました。勝訴した中国企業は「無印良品/Natural Mill」という日本の無印良品の模倣店舗を運営していましたが、良品計画は敗訴の結果、損害賠償金約1000万円を支払うよう命じられました。原因は、中国市場に進出する前に事前に商標登録を実施せず、先に登録されてしまったからです。

図1:弁護士・趙 万利(上海段和段(大連)法律事務所 中国登録弁護士)が、ひろしま産業振興機構のオンラインセミナー「中国の商標登録申請及びトラブル実例について」で取り上げた事例から
http://www.chinawork.co.jp/dl/trademark.mp4
鹿児島県の有名な芋焼酎「森伊蔵」も、大きく取り上げられました。2007年に福岡県大牟田市の会社が「森伊蔵」「伊佐美」の商標を無断で、中国で登録。醸造元の森伊蔵酒造、甲斐商店が異議を申し立てていましたが、2012年、中国商標局はこの異議申立を認めませんでした。中国で販売実績がないため、悪意を持った登録だとする根拠がないというのがその理由です。

森伊蔵酒造と甲斐商店は、中国には輸出するつもりはないが偽物が出回る恐れがあるとして再審査を申請します。そして2018年8月に中国商標局はこれらの商標が「3年間不使用」だったとして請求を認め、登録の取り消しを決定しました。2社はただちに「森伊蔵」と「伊佐美」の商標を中国で登録し、自社ブランドを取り戻すことに成功しました。

――さらに東京スカイツリーです。中国語訳は「東京天空樹」ですが、2012年に中国で先に商標登録されていたことが判明、東武鉄道は止むを得ず「東京晴空塔」と名称を変更しました。しかし雨の日も曇りの日も、いやいや台風の日でさえも中国人から「東京晴空塔」と呼ばれる、泣くに泣けないネーミングになってしまったというわけです。

“冒認出願(抜け駆け出願)”はビジネス化している?

こうした事例をみれば分かる通り、中国で商売をするつもりはないから商標登録なんて関係ないとは言っていられない切実な問題があります。商標登録は早い者勝ちとなっており、先に登録をした方がその権利を得ることができます。これが「先願(せんがん)主義」で、法律で認められている商業競争行為ですが、この認識が日本企業は希薄だといわれても仕方ありません。

貴社の商品の商標が中国で先に登録されてしまうと、ブランドを横取りされたあげく、中国国内に展開した際には、逆に権利侵害だと訴えられる最悪の事態を招いてしまう恐れもあるのです。 なぜこのようなことが起こるかというと、先願主義、つまり「早いもの勝ち」は世界で認められているルールであり、中国では、もはやビジネスだと考えられている側面があります。したがってルールに則って先に登録した方を悪徳業者だと一方的に責めることもできないわけです。

わかりやすい事例では、2012年、米アップルは「iPad(アイパッド)」の商標権を巡り中国で争い、結局、中国企業への6000万ドル(約48億円)の支払いを受け入れて和解に達したことはよく知られています。また、中国ではすでに、「iPhone」、「iPad」の最初のiの文字だけではなく、a~zまで26種類ずつ「aPhone」「bPhone」「cPhone」…「zPhone」と、全ての文字の商標登録がなされているといいます。

もっと身近な事例を挙げましょう。東京都豊島区に「有限公司容山铭尺八」という会社があり、こちらでは、尺八の販売や教室を運営されています。最近は中国から尺八を購入したいとの問い合わせが多いことから、中国向けにネット販売を始めたところ、中国で「容山銘尺八」がすでに商標登録されていることが判明しました。いや、それだけではありません。他の業者の商品名も含めて、尺八に関するほとんどの名称が、上海の尺八販売業者やその他の尺八を取り扱う会社に中国で商標登録されていたのです。

図2:「有限公司容山铭尺八」のホームページ
https://www.yozan-hikichi.co.jp/

さらに代表者で有名な尺八演奏者でもある引地章夫(あやお)先生の「引地容山」という名称まで登録されていたというから驚きです。仕方なく、代表者のお名前である「章夫」を尺八の商品名の商標として登録したのでした。

※容山銘尺八は2021年6月にバイドゥ(株)が提供する中国向け越境ECプラットフォーム「百分百(baifenbai/バイフンバイ)」に出店しました。 https://baifenbai.shop/ec/product/brand/1628/1

このような事例が多いため、日本の特許庁も、「商標の保護は世界的に属地主義(その国の範囲内でのみ保護されること)が採用されている。海外で商標を保護するには、その国で商標登録をしなければならない」と指摘。そして、「日本で登録している商標でも、外国で使用すると、その国にある商標権を侵害する可能性がある」とし、冒認商標に対抗するには、何よりも海外で先に商標登録しておくことが大切だと警鐘を鳴らしています。

ですから、中小企業であっても中国でテスト販売や国際展示会に参加するのであれば、商品やサービスの名称について商標を登録申請し、他企業に奪われないようにするべきです。なぜなら、そのような活動は、「これから中国に出ていきますよ」と宣言しているようなものなので、狙い澄ましている業者から、先に抜け駆けして冒認出願されてしまうリスクが高いことになります。 ※中国の国際展示会への出展について、「商品が出展された日から6ヵ月以内である場合には、同商標の出願人は優先権を享受することができる。」(中国商標法26条)と規定されています。

それでは、商標と取得するにあたっての基本的な概要を以下に説明していきます。

登録商標を取得するための条件を確認しておこう

商標は何でも取得できるわけではありません。中国商標法では、「登録出願にかかる商標は、顕著な特徴を有し、容易に識別でき、かつ他人の先に取得した合法的権利と抵触してはならない。」(中国商標法9条)と定義し、構成は、文字、アルファベット、図形、数字、色、立体、音…等からなっているものと規定しています。 そして、商標として使用できないものとして、国名、国旗、国章、軍旗等と同一または類似のものや各国政府よりなる国際組織の名称、旗、徽章等と同一または類似のもの。さらに「赤十字」、「赤新月」の名称、または標章と同一または類似のもの、県クラス以上の行政区画の地名や周知の外国地名は、商標とすることができない…等となっています。(同10条)

例えば、以下の左のリンゴや右の車は、顕著性があって識別できるかで判断されます。商品の単なる普通名称、図形、型番にすぎないものは商標として認められません。

また、1つまたは2つの普通のアルファベット(AとRO)の場合。これらも顕著性や識別力(特徴)が明確でないため、商標として認められません。

ただし、以下のように通常のフォントにデザインを加えるか、他の要素と組み合わせて全体的に顕著性があり識別力(特徴)を有するものは商標として認められることになります。(同11条)

文字が3つ、あるいは3つ以上のアルファベットの文字から構成されていて、なおかつアルファベッドの順序が異なっている場合や、読み方や字の形が明らかに異なっている場合は、商標として認められます。また、意味がない、または意味が異なっていて、商標全体の顕著性を明らかにしており、商品やサービスの出所に対して混乱が生じにくいものも認められます。

中国には「馳名(ちめい)商標」という概念があります。これは、日本でいう「著名商標」にあたるもので、これに認定されることでより広い保護範囲を享受することができます。 「関連公衆に熟知されている商標について、所有者は、その権利が侵害されたと思うとき、本法の規定に基づき、馳名商標への保護を求めることができる。」(同13条) 以下は、代表的な「馳名商標」です。
図3:中国驰名商标品牌重点推荐(中国馳名商標ブランド重点推薦)
http://brand.ppsj.com.cn/Well-knownTrademark.html

商標の分類はかなり複雑、専門家に相談しよう

図4:「桜葉コンサルティング(株)」ホームページの中国商標分類一覧
https://chinawork.co.jp/catindex/
商標は、大分類(国際商標の分類と同じ)、中分類、小区分と区別されています。大分類や中分類は概念表示ともいわれており、小区分は分類というよりは、どんなものかを例示として表しています。 例えば、大分類の第25類「被服履物」→中分類で「衣物」→小区分で「衣服(被服)」と最終的に小区分まで絞り込んでいくことになります。 大分類は45類があり、1-34類が商品商標で、35-45類がサービス商標となっており、貴社の商標がこの45分類の中のどこに含まれるのかをまず見極める必要があります。 その後、中分類から小区分と探していきますが、この小区分は数が多く、経験やノウハウが必要なので、専門性の高い業者に相談されることをお勧めします。

商標出願前の確認と類似商標調査

ここまで理解できたなら、いよいよ商標登録の類似商標調査に取り掛かることになります。ただ、その前にまず以下の商標登録出願前のポイントを確認しておきましょう。

  • ① どんな商標(文字、ロゴ…その他)を登録するのか
  • ② その商標は何を表しているのか(中国の商標局はこうしたところに敏感です)
  • ③ どんな商品またはサービスを指定するのか、また用途(区分)は何か
  • ④ 正当な権利者は誰か(会社か個人か)、過去に登録されていないか
  • ⑤ 登録されていた場合、登録後10年経過していないか、更新登録はされているか

もし日本国内ですでに登録商標を取得されているのであれば、その商標証のコピー画像があれば、区分はそれを参考に選定しやすくなります。

まずは類似商標や冒認出願を調査して確認する

商標登録申請を行うには、まずは類似商標があるのか確認します。登録を希望する商標に類似商標が存在する場合は拒絶され、申請が却下されることになります。どのようなケースだと類似商標に指摘されるのか、みていきましょう。

(1)外観類似

商標の外観(見た目)が検討されます。ご覧の通り、ロゴの線の太さが違っているだけで、外見は同じに見れるため、どちらかは外観類似と判断され、類似商標とみなされます。

図5:https://en.wikipedia.org/wiki/Alfred_Dunhill_Ltd.

(2)称呼類似

商標の呼び名が、カタカナと英語で同じ場合は、称呼類似という類似商標に判断されます。

(3)観念類似

商標の観念(イメージ)が同じ場合は観念類似という類似商標に判断されます。同じ商品を同じ商標で登録することはできません。

(4)禁止商標

すでに既述していますが、中国商標法によって禁止された図や文字があります。以下のように、「フランス」という国家名、「人民元」という紙幣、国際組織の赤十字のマーク等を使用することできません。

図6:図1と同様(http://www.chinawork.co.jp/dl/trademark.mp4)

商標登録の申請の流れを理解しよう

申請手続きは、以下の図のように日本の商標登録とほぼ同じ流れとなります。商標は先願主義のため、他社より早く商標庁に出願できれば、登録異議申し立てが出されない限りは、一応の権利を確保したことになります。商標が正式に登録できれば、登録された商標であることを示すRマークを付けて利用できますが、とりあえず出願申請をしておけば、登録の前でもTMマークを付けて、その商標を利用することが可能です。

図7:図1と同様(http://www.chinawork.co.jp/dl/trademark.mp4)

商標が無効だと判断される理由

(1)職権によって 登録商標が商標法の禁止規定に違反した場合、中国の商標局は職権で無効と判断できます。また、すでに登録されている商標については、他の会社法人または個人は、商標審査委員会に対し、当該登録商標を無効とするように請求することができます。

  • ① 使用を目的としない悪意による商標登録出願を拒絶する(中国商標法4条)
  • ② 商標登録の出願は、他人が現有する先行権利を侵害してはならない。(同32条1項)
  • ③ 他人が先に使用している一定の影響力のある商標を不正な手段で登録してはならない。(同32条2項)
  • ④ 商標の公告登録日から3年間使用されていない場合は、取下げることができる。(同49条)

冒認出願からどうやって商標(ブランド)を守るか!

最後に、商標の冒認出願について、特許庁は、「冒認出願対策リーフレット」を作成し、「法的対抗手段をとる際の注意事項」を公開しています。これをわかりやすく解説しておくので参考にしてください。

(1)中国で早期に商標出願するのが最善策

中国で第三者に商標出願されると、事業展開で商標の使用が大きく制限されます。中国でのビジネス展開を想定しているのであれば、中国での早期商標出願を行うことが極めて重要です。 インターネットの進展と中国人観光客の急速な増加により、日本の情報(日本のブランド情報を含む)は、インターネット等を通じてすぐに中国に伝わり、冒認出願される機会が増えているからです。

商標登録出願の際には、以下の出願戦略に留意する必要があります。

  • ① 特殊な設計又は要素を加えることにより地理的表示の商標の顕著性を高めること。
  • ② 日本語または英語の商標を登録出願すると同時に漢字の商標も出願すること。
  • ③ 指定商品または指定役務の範囲をビジネスで使用予定のものより、関連度の高い範囲まで適度に拡大すること。例えば、被服の販売を取り扱企業であれば、靴、バッグ、メガネ、化粧品などの近しい商品や「他人のための販売促進」役務に対しても同時に商標を登録出願する…等。

(2)中国で登録商標を取得したら使用証拠を保存し、管理すること

中国で商標を使用しているという証拠は、以下の二つの状況に役立ちます。

  • ① 企業所有の商標が、他人に不使用取消審判(商標の公告登録日から3年間使用されていない場合)を請求された場合。
  • ②企業が他人により登録された冒認商標に対して、異議申立または無効宣告を請求する場合。

すなわち、普段から商標の使用証拠を収集・保存・管理しておけば、上記のような必要な時に速やかに対応することができます。

(3)販売業者や販売代理店及びその他の業務提携者などの商標使用に関する管理

販売業者や販売代理店等の業務提携者による冒認出願もよく見られます。そのため、権利と責任が明確に記載されている契約書を締結しておくことが重要です。 なお、販売業者や販売代理店による商標の使用が、基準や法律に合うかどうかも商標権の維持に直接影響を及ぼします。締結した契約書は、専門の弁護士にリーガル・チェックしてもらうことを推奨します。

参考:
海外における商標の抜け駆け出願(冒認商標)対策 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/bonin/index.html

執筆:桜葉(サクラバ)コンサルティング株式会社 代表 遠藤誠
※桜葉コンサルティング(株)は、日本企業の中国ビジネスをサポートしている会社です。中国商標登録に関するお問い合わせは、こちらのホームページをご覧ください➡https://chinawork.co.jp/